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慶應大学経済学部2016年・小論文解答例 (江藤塾版・大学側未公表)

設問A 解答例:マイケル・サンデルによれば共和主義的な政治理論の自由の概念がリベラルな自由と異なるのは、国民へ自己統治に必要な性質を要求する点にある。
後者が人は自らの価値観を選択出来ることを優先するが、前者では自由は自己統治の分かち合いであり、その道徳や美徳を身につけることが要求される。そして共通善について市民同士が議論して、政治共同体の決定に関与しなければならない。
ゆえに共和主義者は自己統治を支えるための市民的資源を国民に要求する。なのでジェファソンは自律性を欠いた働き手が現れるような経済活動、例えば大規模製造業へ否定的だった。逆にリベラルな自由主義からは経済活動や労働形態は原則として制約を受けないだろう。(300文字)
解説:今年の課題文は、ハーバード大のマイケル・サンデル著「公共哲学 政治における道徳を考える」の一節で、トマス・ジェファソン(アメリカ合衆国第三代大統領)の考え方を引いたものでした。

設問は2つで制限時間60分の記述量が600字。

まず問題Aが「共和主義の自由」を「リベラルな自由主義」と対比して説明するもので、実質的には、指示に従った上での課題文要約問題です。設問Bは未来世代のために現行世代が負担を負うこと(例えば温暖化対策)は、我々の「自由」と矛盾しないかについて述べる問題です(こちらの方は字数の都合で省略)。いずれも制限字数は300字ですが、短すぎず長すぎず自然な分量の字数指定です。

なお、慶應経済は小論文の配点が極めて例外的に慶應では低めですが、他の慶應の多くの学部と同様に小論文が国語の代わりに必須科目です。

*この点をさして、慶應が国語がない「軽量入試」と言われることがありますが、実際は課題文をまともに読んでちゃんと書くことが求められていて、また英語の読解問題も良質(特に文学部と経済学部)なので、実際は国語のヘビーな試験を課しているのに近いです。
もっとも、古文漢文が出ないためそれをやらなくても合格出来るという意味では「軽量」ですが、マークシート式ではなく長文の論述を課して、労力を割いて採点する点では教員の負担からも良心的であり、解答もきちんと難しい文を読めて、それを理解した上で長い日本語の文章作成を要求しているので(実際の合格水準がどうかはともかくとして)、それほど軽量ではないというのが私見です。

設問B解答例は次回に続きます。
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