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都立小石川中等学校適性試験平成26年・400字論述・解答例(学校側未公表)と出題趣旨分析と解答の指針(江藤塾版)

初めに:近年人気の公立中高一貫校では「適性検査」として表現力と思考力を問う問題が出題されます。その実質的な内容は、大学受験の小論文に酷似したものです。類似では男子御三家の麻布中学が社会の中で180字程度の論述を出すことがありますが、問題としての難易度は小石川の方が高くなっています。
学校側は、模範解答例について公表していませんが、勝手に書いていいとか客観的な採点基準がないわけではなく、明らかに求めている「スジ」が存在しています。この平成26年は特に、問題文の指示が明確で、「言葉の変化」というテーマについて相反する見解を述べた2つの課題文を読ませた上で、受験生の意見を求めるという形を取っています。つまり、詳しくは後述しますが、どちらの立場に賛成・反対かを問うディベート形の小論文試験と思われます。以下、課題文については著作権の関係で省略しますが、ここをクリックしたジャンプ先の都立小石川中高ウェブサイトにPDFで全文が掲載されているのでご覧下さい。

[問題]あなたは「言葉の変化」について、どのように考えますか。「文章2」,「文章3」両方の意見を踏まえ、根拠を明らかにして、四百一字以上四百四十字以内で書きなさい。その際、自分とは異なる立場の考えについてもふれること。なお、内容のまとまりやつながりを考えて段落にわけなさい。

解答例: 私は、言葉というのは時代とともに否応なしに変化するものであるし、それを食い止めるのは不可能と考える。
 たしかに、言葉の変化に伴うマイナスも生じることはあるだろう。例えば文章3は不必要な言葉の変化に対して、否定的な立場を取っている。その例にある同じ言葉が人によって真逆の意味を持つばあいなどはなるべく保守的に昔ながらの用法を守ることにも一定の合理性があるだろう。
 しかし、私の考えは文章2と同じで、言葉の変化は乱れと考えるべきではない。むしろ、新しい言葉とみるべきだし、矯正しようとするのも不毛な努力になることが多い。
 例えば文章3が否定する「こだわる」の肯定的な使い方は、今では違和感を持つ人の方が少ないだろう。これを人工的に変化させるのは無理に等しい。また言葉は、世界を表すものだがその世界自体が時代とともに変化しているのだからそれに言葉も付いて変化せざるを得ない。例えばメールは今では紙でなく電子メールを意味することが一般的だ。
 そして私達も、新しい言葉について行かざるを得ないのだ。(440字)

出題趣旨の分析と答案作成の指針:学校側は、模範解答例について公表していませんが、勝手に書いていいとか客観的な採点基準がないわけではなく、明らかに求めている「スジ」が存在しています。
そもそもの大原則ですが、ありとあらゆる試験では設問の指示に従うのがきまりです。そして、このような小論文型の試験では、設問の指示に従っているかどうかが何よりポイントです。
というのは、小論文も試験の一種なので、採点者はたくさんの数の答案を、あるていど均一な基準でものすごいスピードで採点しないといけないわけです。そういうわけで「設問の指示」にしたがっているか、に配点があります。そして今回のように、設問の指示が具体的で複数ある場合には、その部分ごとに、部分点があるわけです。
また、設問は受験生にとっても、「何を書いていいか分からない」というのを防いでくれる有り難いヒントなのです。ただ、逆に考えると設問の指示に従えなかった受験生=読解力のない受験生として、点数がもらえない、ということになり得ます。
 さて、この平成26年小石川をみてみましょう。この問題は、問題文の指示がとても明確で、「言葉の変化」というテーマについて相反する見解を述べた2つの課題文を読ませた上で、受験生の意見を求めるという形を取っています。つまり、どちらの立場に賛成・反対かを問うディベート形の小論文試験としての解答が期待されているとみられます。なお、立場は言葉の変化に対して賛成でも反対でも構いませんが、「賛成」のほうが論述しやすいと考えられます。というのは自分なりの論拠を探す際に、言葉の変化がもたらしたマイナス面をその場で思いつくのが大変だからです(もし書くとしたなら、戦前と戦後で文語文が変化して、そのため現行世代に明治の文語文などといった、過去の文献を読む力が落ちているというふうな点を論拠にするなどがスジとして考えられます。ただしその場で受験生が思いつくのは難しいでしょう。あるいは、そうでないばあい単なる「ボヤキ」や「感情論」のようになりそうで、論拠部分についての点数を取りっぱぐれるリスクが高いです)。

予想配点:満点で40点。
そのうち①言葉の変化についての自分の立場を明確に述べている(10点)
②「文章2」,「文章3」両方の意見に触れている。(5点ずつ・合計10点)
③段落わけを行っている。そしてその段落わけが意味ごとのまとまりとして筋の通ったものになっている(10点)
④自分が取っている意見の根拠を明らかにしている(0〜10点)
以上で、十分な論述が出来ていれば40点満点が付くと考えられます。ただ時間制限と字数制限が厳しいので④については5点もついていれば十分トップクラスの答案になるはずです。

なお、マイナス要素は⑤自分と異なる立場の意見に触れていない(—10点。ただし、設問の指示通り文章2と3の両方を適切にひけていた場合、この減点を受けることはないと考えられる)
⑥字数制限を守っていない(400字以下300字以上、または441字以上480字以内の場合マイナス10点。これらよりも更に逸脱している場合、マイナス20点)

といったあたりと考えられます。


以上。
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