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開成中学社会・平成28年推論論述問題・江藤塾版解答例と答案作成方法

今年の開成中学入試では、社会科で大きな変化が見られました。これまで専ら知識と語句問題に徹していたのが、あらたに知識だけではなく、推論と記述・表現能力を問う論述問題(解答欄は字数自由。ただ概ね60〜80字の答案が収まる範囲)を出題しました。著作権の関係で、課題文は省略しますがザックリというと天然ガスを日本国内へ輸入するときに液状化させる理由と、液化天然ガス(LNG)の輸入量が2011年以降増大している主因を問う問題です(著作権上の理由で、抜粋は避けます)。
以下に江藤塾版の解答例を出しておきます。

開成中学社会科・大問2・問2(2)
②「天然ガスは気体の状態では体積が大きく、また流出事故の際に可燃、爆発の危険が大きい。これを液化し輸送するのは体積を抑えて多くの量を安全に輸送するという狙いがある。」(80字)
③「2011年、東日本大震災に起因する福島原発事故をきっかけに、国内の原子力発電量が激減した。その代替エネルギーとして液化天然ガスを利用した発電の必要が増大したこと。」(80字)

答案作成の指針:②は液体の方が気体よりも体積が小さいという理科常識を用いて答えるとともに③の解答で触れることになる「福島第一原発事故」から、事故リスクの存在も連想して、それも解答させるという発想力を見る問題と思われます。一方③は、より常識的な発想能力を見る問題です。③のほうが発想も容易であり、また新聞、ニュースサイトの記事を読んでいたり、ニュース番組をよく見ていたら知識として答えることも可能です。

なお、以上は東大入試で地理の論述問題として出題される傾向や、センター試験地理で多く見られる推論問題とそっくりなので、この入試問題を解くこと自体がセンター試験および東大入試の演習となっているという仕組みになっています。

これで麻布中学、武蔵中学とそろって、男子御三家の全てが東大型の推論論述問題を社会で取り入れたことになります。なお渋谷教育学園渋谷などでも、選択肢式が多いですが推論問題を出題することが多いです。社会で些末な知識(例えば、桃の生産量で3位の県はどこかなどといった、各地の特産物などの異様に細かい情報。)を試さず、東大入試に明らかに直結する問題を出題するという難関中学入試の傾向がこれでますます強化されたことになります。実は小石川中学高校を初めとする、都立難関・公立中高一貫校の適性分野でも、まさにこれを行っていました。この流れは今後も続いていくでしょう。

逆に、偏差値の高い学校でも、論述が少なく、従来型の産業地理偏重の出題を続けていたり、学校(例を挙げれば女子学院や巣鴨中学など)は進学実績が東京大学に限らず伸び悩んでいる傾向です。おそらくは教員の研究不足などが原因であり、また偏差値でも低下傾向にあります。

ただ、開成などを弁護しますとこの手の推論能力と思考力、論述能力を試す試験の方が明らかに問題として良質で、解かせることそれ自体に教育効果もあります。逆に言うと変な重箱の隅をつつくような出題をする学校は偏差値がいくら高くても、入学して以降もあまりよい教育をしていないだろうなと推測されます。

加えて言うと、今年の開成入試は大問2つですが推定配点の約半分が世界地理となっています。実は小学校では世界地理をやらないので(中学校からの学習範囲)、社会でももう完全に小学校の学習範囲を逸脱したことになります。

ちなみに、開成が東京大学に非常に近い問題を出すのは国語では以前からの傾向で、中学入試・高校入試ともに解答欄が独特の形状でタテ2本を中心とする空欄(マス目が付いていない)という、東京大学のものを真似ています。
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