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近距離通学の進め〜遠方への通学時間が学生に与えるマイナスの影響(特に首都圏)を考える

仮にですが、首都圏在住と仮定して偏差値60の高校(徒歩のみで通学時間10分)と偏差値65の高校(電車利用で、通学時間1時間10分)があり、両方の学校に合格した場合、どちらに進学するのがベターでしょうか。*学費や校風は類似しているとしましょう。

後者を選ぶ受験生や親御さんが多い気がしますが、私なら前者をオススメします。というのは、遠方へ通学すると①交通費が余計にかかるというだけでなく、②時間が奪われる上に、③(路線にもよりますが)ラッシュアワーの通学自体で疲労消耗するからです。

従って、通学距離が長い学校に進むのは余り良くないというふうに考えます。24時間という時間は思いのほか短くて、睡眠時間や食事にお風呂といった、絶対に必要な時間がそれなりにあります(10時間ほどでしょうか)。これに学校の授業が7時間とすると、学生の手持ち時間は1日残り7時間しかありません。特に運動部をやっている場合で部活の練習が厳しければもっと手持ち時間はなくなります。

そこから通学時間を引いていくのだから、遠方通学をしながら運動部、などとやっていると相当に勉強する上でハンディになるわけです。もちろん電車内で復習や暗記などをして、通学時間も上手に使えるという学生もいるでしょうが①そもそもそういう学生は一握りであり②また、どうせ勉強をやるなら電車通学中よりも普通に机に座ってやったほうが、手で書く勉強もできるなど、柔軟に学習手法を選べるので、より効率的に成果が出せるように思います。

そのため異論はあっても「だいたい通学時間が10分増えるほどに、偏差値で1ほどマイナスの影響がある」(大学受験の、大手予備校模擬試験換算)と思います。ザックリした数値なのですが、これより仮にインパクトが小さいとしてもやはり成績の良さと通学時間には負の相関関係がありそうです。

ちなみに、毎年東京大学合格者数でトップを誇る、開成の中学校(荒川区)は、社会で「江戸」の歴史と東京の地理に関する、首都圏住民でないと回答が難しい、というか東京23区内の住民でないと答えにくい内容を出すことが多くあります。これについては遠方からのお試し受験組を弾くため、という説明の他に「近距離から通う学生ほど、最終進路が難関大学に合格しやすい傾向があった」という過去の進路追跡調査に基づく理由があるのかもしれません。

また一部の国立小学校や中学校では、受験可能な住所を近隣に限定しており、女子の桜蔭中学(文京区)も、面接の際に自校への通学時間を聞くことがあるといいますが、これらにも同様の趣旨があり得ると思います。

もっとも2時間などの通学と激しい運動部の練習をしながら、受験でも十分に成果を出していたような例もあるので、「遠方通学は絶対にダメ」とまではいいません。ですが近くに住んでいたらもっと圧倒的にラクだったんじゃないかな?という気もします。

3月8日追記:開成では、実際、生徒の住所別統計と通学所要時間の統計をとって、HPに公表しています。結果を見ると圧倒的に東京都内の生徒が多いです。*いちおう下宿についての資料も学校で用意しているとありますが、下宿生が含まれるとおぼしき、極めて短距離の生徒は数少ないことも見て取れます。

となると、通学時間の統計を取るほどであるならば、そのデータと学内成績や追跡進路の結果についても相関関係を調べるのが、合理的です。逆にそれをしていなければ、非常に不合理なことに労力を使う学校ということになりますが、そうとは思えません。

by 江藤塾
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